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Noside History

「第十話:春光」

今でもあの時のことは昨日のことのように覚えています。

あれは2011年ラグビーワールドカップ準決勝「フランスvsウェールズ」戦だっただろうか…
当時は今と違い、ノーサイドスタッフはたった3人、しかも容子も僕も業務、人間性、精神力などにおいてまだまだ未熟の極み。
そんなギリギリの中で迎えたワールドカップ。
汗だくで店内を走り回りながら、今より9歳も若いフットワークの軽さと体力だけで日々、何とか乗り越えていました。

が、遂に来てしまったんです。

ワールドカップ期間中、最も恐れていたことが…
それがスタッフゼロデー。

準決勝、しかも北半球頂上対決という超ビッグカードの日に限って、どうしてもスタッフ全員のスケジュールの都合がつかず、容子と僕の二人だけでお店をやるしかない状況に陥ったのです!!!

もちろん、お席は既にご予約で超満席!!!

もはや笑いしか出てこない状況に皆さまもご想像つくかと思いますが、100人近くのグローバルなお客様を相手に厨房に容子、カウンターに僕の計二人で対応。

出来るわけもなく、営業はボロボロ(笑)


30分前にオーダー頂いた生ビールを持っていくと「遅すぎてテンション下がるわ」。

45分前にオーダー頂いたフライドポテトを持っていくと「もういらないです」。

もはやそんな状況にも別の意味で動じなくなり、(ご迷惑をおかけしたお客様へは本当に申し訳ございませんでした。)

同試合、レッドカードで退場となったウェールズのキャプテン、サム・ウォーバートン選手の落涙にも縋り付きたい思いでカウンターに立っているのがやっと。

顔を上げるとお客様から凄い眼力で見られてしまうので、目の前のことにただただ無心で取り組み、出来ることを出来る範囲でやっておりました。
そして試合はノーサイド。
飲みたいものが飲みたい時に飲めない。
食べたいものが食べたい時に食べれない。


そんな状態にお客様は当然帰られるかと思いきや、ほとんどのお客様がお店に残ってワールドカップの他の試合をリクエストで観たい、とのこと。

容子も僕もさすがに気力体力の限界、自宅に帰る力すら残っておらず、厨房の中で話し合った結果、臨時閉店する旨を皆様にお伝えしようとしたまさにその時でした。


「…ター!...こさん!」

と入り口付近から聞き慣れた声が!


容子:「えっ?なんか今、私達を呼ぶ声が聞こえなかった?」
僕:「いや、気のせいでしょ。」
「…スター!...うこさん!」

あれっ?確かに声が聞こえる!

「マスター!!!容子さん!!!!!」


容子:「ほらーっ!!入り口に行ってみてよー!」
僕:「えーっ、外に出たらまたクレーム言われそうだから...」
と呟きつつ、厨房の扉から店内をそっと覗くと…


なんとそこには!!!

当日藤沢でラクロスの部活の試合でお休みだったはずのスタッフの春ちゃんが一人、大柄な外国人でごった返す中、笑顔で立っているではありませんか!!!

「お店が大変かなと思い、試合が終わってそのまま来ちゃいました!エプロン貸して下さい!!今からすぐに手伝います!!」


僕:「容子ーーーーーーっ!!!!奇跡だ!!!奇跡が起きた!!!!
春ちゃんが来てくれたー!!!」

容子:「えっ!?だって春ちゃんは試合のはずじゃ…」
僕:「試合が終わってすぐに来てくれたんだって!!」
容子:「そんな…春ちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」


試合が終わった後、そのまま駆けつけてくれたことが容易に分かる服装。
後光を纏った満面の笑顔。
そして何より藤沢から駆けつけてくれた春ちゃんの気持ちが本当に嬉しくて嬉しくて…


もしこの世に天使や神様がいるならばあの時の春ちゃんはまさに天使という名の神。

夢まぼろしか、汗とも涙とも分からない滴と共に何度も目を擦り、容子と二人で泣き崩れそうになる体を必死に耐えながら
「有り難う。」
「有り難う。」
「本当に有り難う。」
と何度も何度も頭を下げながら、神様と春ちゃんへ感謝の念を祈りました。

その後はもちろん、春ちゃんという一騎当千の助っ人により、容子と僕の気力も復活。
3人で無事、夜まで営業を果たし終えることが出来たのは言うまでもありません。

春ちゃん、あの時の御恩は一生忘れないよ。
本当に有り難う。
(明日へ続きます)


★Message from 容子
「ワールドカップ準決勝を二人で営業とか今なら考えられない。
そんな事も今より9歳も若い二人はがむしゃらにがんばれた。
でも忙しすぎた…手が足りない…もう気力も体力も尽きた。
尽きかけた時じゃない、尽き果てた時、現れたはるちゃん♡
もう天使でしかないし!
ラクロスの試合で藤沢に行ってたのに…
なんで?えーーー!とにかく嬉しくて。
はるちゃんも疲れてるはずなのにテキパキ元気に動いてくれるし、そんなはるちゃんに引っ張られて尽きた力が復活!
当時もバイトを辞めてからも沢山支えてくれたはるちゃんは今では二人のママになって月日は流れてもあの時の感動は忘れないよ。はるちゃんありがとう♡」

 

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